酸性ストレートとは?基本知識からメリットまで
くせ毛やうねりでお悩みの方に人気の「酸性ストレート」。従来の縮毛矯正と何が違うのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
酸性ストレートとは、pH5.5以下の酸性領域で行うストレートパーマのことです。一般的なアルカリ性の縮毛矯正と比べて髪へのダメージが少なく、自然な仕上がりが特徴です。
美容師歴15年の私が、最新の技術と知識をもとに酸性ストレートの全てをご紹介します。髪質改善を専門とする立場から、お客様一人ひとりに合った施術方法についても詳しく解説していきますね。
酸性ストレートの仕組み
酸性ストレートの基本的な仕組みを理解するには、まずpHという概念を知る必要があります。pHとは水素イオン濃度を数値化したもので、0〜14の間で表されます。7が中性、それより低いと酸性、高いとアルカリ性になります。
髪の毛の等電点はpH5.5前後。この数値より高いpH(アルカリ性)では髪が膨潤し、キューティクルが開きます。一方、pH5.5以下の酸性領域では髪の膨潤が抑えられ、キューティクルが閉じた状態を保ちます。
従来のアルカリ性ストレートパーマは強力に髪を還元するため、くせ毛をしっかり伸ばせる反面、ダメージも大きくなりがちでした。それに対して酸性ストレートは、髪の膨潤を抑えながら還元作用を与えるため、ダメージを最小限に抑えられるのです。
具体的には、システアミンやチオグリコール酸システアミンなど、酸性領域でも働く還元剤を使用することで、髪の内部結合(シスチン結合)を切断し、ストレートな状態に再結合させます。
酸性ストレートの種類
酸性ストレートは大きく分けて3つのタイプがあります。それぞれ特徴が異なるので、髪質や状態に合わせて選ぶことが重要です。
1つ目は「用時調製タイプ」。MTやスピエラといったエステル系薬剤を混ぜて使用するタイプで、自分で還元力を設定できるのが特徴です。しっかりとクセを伸ばしたい場合に適していますが、調製の計算が難しく、水抜きアイロンが必要なため技術的難易度が高いです。
2つ目は「非用時調製タイプA」。主にアルカリで使用している還元剤を配合したタイプで、ハイダメージ毛に対してシンプルに薬剤選択できるメリットがあります。ただし、還元力の調整が難しく、水抜きアイロンが必要です。
3つ目は「非用時調製タイプB」。チオグリコール酸システアミンなど、酸性でも働く還元剤を配合したタイプです。健康毛からハイダメージ毛まで幅広く対応でき、薬剤を混ぜることでしっかりクセを伸ばせます。アルカリストレートと同じ感覚でアイロン操作ができるため、比較的扱いやすいのが特徴です。
酸性ストレートと従来の縮毛矯正の違い
酸性ストレートと従来の縮毛矯正には、いくつかの重要な違いがあります。その違いを理解することで、あなたの髪質に最適な選択ができるようになります。
まず最も大きな違いは、使用する薬剤のpH値です。従来の縮毛矯正はpH9〜11程度のアルカリ性薬剤を使用するのに対し、酸性ストレートはpH5.5以下の酸性薬剤を使います。この違いが髪へのダメージ度合いや仕上がりの質感に大きく影響するのです。
ダメージ度の違い
アルカリ性の縮毛矯正は髪を大きく膨潤させるため、髪の内部構造に与える影響が大きくなります。髪のタンパク質が変性し、キューティクルが損傷しやすくなるのです。
一方、酸性ストレートは髪の膨潤を最小限に抑えながら還元作用を与えるため、髪の内部構造へのダメージが少なくなります。特にカラーリングやブリーチなどで既にダメージを受けている髪には、酸性ストレートの方が適していることが多いです。
私の施術経験では、ハイダメージ毛のお客様に酸性ストレートを施術した場合、従来の縮毛矯正よりも髪の手触りや艶が格段に良くなるケースが多いです。髪質改善を目指す方には、この点が大きなメリットとなります。
仕上がりの質感の違い
従来の縮毛矯正は強力にクセを伸ばすため、真っ直ぐな仕上がりになりますが、時に不自然な硬さや平坦さが出てしまうことがあります。特に何度も繰り返し施術を行うと、髪に動きがなくなり「ペタンコ」になりがちです。
酸性ストレートは髪への負担が少ない分、自然な動きや柔らかさを残した仕上がりになります。「ストレートだけど自然な動きが欲しい」というお客様には、酸性ストレートの方が満足度が高いことが多いです。
ただし、強いくせ毛の場合は、酸性ストレートだけではクセを完全に伸ばしきれないこともあります。そのような場合は、部分的にアルカリ性の薬剤を併用するなど、髪質に合わせた調整が必要になります。
持続期間の違い
一般的に、従来の縮毛矯正の方が持続期間は長い傾向にあります。強力にクセを伸ばすため、新しい髪が生えてくるまで効果が持続することが多いです。
酸性ストレートは髪に優しい分、持続期間はやや短めになることがあります。ただし、最近の酸性ストレート剤は技術の進歩により持続性も向上しており、適切な施術とホームケアを行えば、3〜6ヶ月程度の持続が期待できます。
お客様の中には「少しずつ自然な状態に戻っていくのが良い」という方もいれば、「できるだけ長く効果を持続させたい」という方もいます。どちらを重視するかによって、選ぶべき施術も変わってきますね。
酸性ストレートの施術手順とポイント
酸性ストレートの施術は、髪質や状態によって細かく調整する必要があります。ここでは基本的な施術手順と、美容師として私が大切にしているポイントをご紹介します。
酸性ストレートは単に薬剤を塗布するだけでなく、髪質診断から薬剤選定、アイロン操作まで、一連の流れが重要です。特に髪質改善を目指す場合は、細部にまでこだわった施術が求められます。
事前カウンセリングと髪質診断
まず最初に行うのが、詳細なカウンセリングと髪質診断です。お客様の髪の状態(ダメージレベル、くせの強さ、髪質の硬さ・軟らかさ)、過去の施術履歴(カラー、パーマ、縮毛矯正など)、希望の仕上がりなどを丁寧にヒアリングします。
特に重要なのは、髪のダメージレベルの見極めです。ダメージレベルは一般的に0〜5の6段階で評価され、レベル4以上の場合は特別なケアが必要になります。
私の場合、お客様の髪を実際に触りながら、毛髪の弾力性や吸水性をチェックします。また、髪の一部を取って引っ張り、どのくらいの力で切れるかを確認することもあります。これらの診断結果をもとに、最適な薬剤と施術方法を決定していきます。
薬剤選定のポイント
酸性ストレートの薬剤選定は、髪質とダメージレベルに応じて行います。基本的には、ダメージが大きいほど穏やかな薬剤を、くせが強いほど還元力の高い薬剤を選びます。
例えば、硬くて強いくせ毛の場合は、還元力の高い薬剤を選び、放置時間も長めに設定します。逆に、軟らかくてダメージのある髪には、還元力の弱い薬剤を選び、放置時間も短めにします。
また、一つの頭の中でも部位によって髪質やダメージ度が異なることが多いため、部位ごとに薬剤を変えることもあります。例えば、前髪は他の部分より薄くてダメージを受けやすいため、より穏やかな薬剤を使用することが多いです。
既にストレートパーマや縮毛矯正を施術済みの部分(リタッチ部分)には、新生部分とは異なる薬剤を使用します。リタッチ部分には、より穏やかな薬剤を選び、新生部分にのみ還元力の高い薬剤を使用するのが一般的です。
アイロン操作のコツ
酸性ストレートでは、アイロン操作が仕上がりを大きく左右します。アイロンの温度設定や通し方によって、髪の質感や持続性が変わってくるのです。
アイロンの温度は、髪のダメージレベルに応じて調整します。健康な髪なら180℃前後、ダメージがある場合は140〜160℃程度に設定するのが一般的です。温度が高すぎると髪が傷みますし、低すぎると十分な効果が得られません。
アイロンを通す際は、一度に取る毛束の量にも注意が必要です。多すぎると熱が均等に伝わらず、少なすぎると作業効率が悪くなります。一般的には5〜10mm程度の薄いスライスで作業するのがおすすめです。
また、アイロンの通し方も重要です。根元から毛先まで均一なスピードで通すことで、ムラなく仕上げることができます。特に根元は熱が伝わりにくいため、しっかりと時間をかけることが大切です。
アイロン後の2剤処理(酸化剤)も重要なステップです。2剤によって髪の結合を再構築し、ストレートの状態を固定します。2剤の放置時間は通常10分程度ですが、髪質や1剤の種類によって調整します。
酸性ストレートに適した髪質と注意点
酸性ストレートは多くの髪質に対応できる施術ですが、特に効果的な髪質とそうでない髪質があります。また、施術前に知っておくべき注意点もいくつかあります。
髪質改善を専門とする美容師として、多くのお客様の髪を見てきた経験から、酸性ストレートの適応性について詳しくお伝えします。
酸性ストレートに向いている髪質
酸性ストレートが特に効果的なのは、以下のような髪質や状態の方です。
まず、カラーリングやパーマなどで軽度から中度のダメージがある髪に適しています。従来のアルカリ性縮毛矯正では更なるダメージが心配される場合でも、酸性ストレートなら比較的安全に施術できることが多いです。
また、軽度から中度のくせ毛やうねりがある方にも効果的です。特に加齢によるうねりや広がりが気になる方には、自然な仕上がりが得られる酸性ストレートがおすすめです。
「縮毛矯正をかけたいけど、あまりにもストレートすぎる仕上がりは避けたい」という方にも酸性ストレートは向いています。自然な動きを残しながらもまとまりのある髪に仕上げることができます。
さらに、繰り返しの縮毛矯正で髪が硬くなってしまった方や、パサつきが気になる方にも酸性ストレートは効果的です。髪に優しい処理で、艶やしなやかさを取り戻すことができます。
酸性ストレートに向いていない髪質
一方で、酸性ストレートが必ずしも最適ではない髪質や状態もあります。
非常に強いくせ毛(縮毛レベルが高い)の場合、酸性ストレートだけではくせを十分に伸ばしきれないことがあります。このような場合は、部分的にアルカリ性の薬剤を使用するか、従来の縮毛矯正を検討する必要があるでしょう。
また、極度のダメージ毛(ダメージレベル5のポーラス毛)には、還元剤を使用する酸性ストレートも負担が大きい場合があります。このような状態では、まず集中的なトリートメントで髪の状態を改善してから施術を検討するのが望ましいです。
太くて硬い髪質の方も、酸性ストレートだけでは十分な効果が得られないことがあります。このような髪質の場合、アルカリ性の縮毛矯正の方が効果的なケースもあります。
施術前の注意点
酸性ストレートを検討されている方は、以下の点に注意しましょう。
まず、施術前のカウンセリングでは、過去の施術履歴を正確に伝えることが重要です。特に過去に縮毛矯正やパーマをかけた経験がある場合は、いつ、どのような施術を行ったかを詳しく伝えましょう。
また、ホームカラーを使用している場合も必ず伝えてください。市販のカラー剤には金属イオンが含まれていることがあり、酸性ストレートの薬剤と反応して予期せぬダメージを引き起こす可能性があります。
施術当日は、できるだけ洗髪せずに来店するのがおすすめです。頭皮の自然な油分が保護膜となり、薬剤による刺激から頭皮を守ってくれます。
さらに、施術後は24〜48時間は髪を濡らしたり、結んだり、ピンで留めたりすることを避けるよう注意が必要です。この期間は髪の結合が完全に安定していないため、形が付いてしまう可能性があります。
酸性ストレート後のホームケア方法
酸性ストレートの効果を長持ちさせ、美しい髪を維持するためには、適切なホームケアが欠かせません。施術後のケア方法をマスターして、サロン帰りの美しい髪を長く楽しみましょう。
髪質改善専門の美容師として、多くのお客様に実践していただいている効果的なホームケア方法をご紹介します。
シャンプー・トリートメントの選び方
酸性ストレート後は、適切なシャンプーとトリートメントを選ぶことが重要です。一般的には、弱酸性〜中性のアミノ酸系シャンプーがおすすめです。これらは髪と同じ弱酸性で、優しく洗い上げながら必要な潤いを残してくれます。
また、シリコン入りのトリートメントも効果的です。シリコンには「髪を重くする」というイメージがありますが、適切に使用すれば、キューティクルを保護し、湿気からの髪の広がりを防ぐ効果があります。
特に酸性ストレート直後の2週間程度は、アルカリ性の強いシャンプーや、クレンジング力の強いシャンプーは避けるようにしましょう。これらは酸性ストレートの効果を早く落としてしまう原因になります。
トリートメントは、髪の中間〜毛先を中心に使用し、根元には付けすぎないようにするのがコツです。根元にトリートメントが多く付くと、髪が扁平になり、ボリュームダウンの原因になります。
ドライヤーの正しい使い方
酸性ストレート後の髪は、ドライヤーの使い方一つで仕上がりが大きく変わります。まず基本として、髪が濡れた状態で放置するのは厳禁です。濡れた髪は水分で膨潤し、キューティクルが開いた状態になるため、ダメージを受けやすくなります。
ドライヤーは、まず大まかに水分を飛ばしてから、ブラシを使って根元から毛先に向けて乾かしていきます。この時、ドライヤーの温度は中〜弱で、風量は強めに設定するのがポイントです。温度が高すぎると髪が傷みますし、風量が弱いと乾くまでに時間がかかり、結果的に熱ダメージが大きくなります。
また、ドライヤーのノズルを使用して、風を一方向に集中させることも重要です。これにより、キューティクルを整えながら乾かすことができます。ドライヤーと髪の距離は10〜15cm程度を保ち、近づけすぎないようにしましょう。
最後に、完全に乾いたと思ったら、さらに1〜2分ほど乾かし続けることをおすすめします。髪の内部に残った水分まで完全に乾かすことで、湿気による広がりを防ぐことができます。
おすすめのスタイリング剤
酸性ストレート後のスタイリングには、重すぎないオイルやミルクタイプの製品がおすすめです。これらは髪に自然な艶を与えながら、湿気からの保護効果も期待できます。
特に梅雨時期や湿度の高い日には、湿気をブロックする効果のあるスタイリング剤を使用すると良いでしょう。ただし、ワックスやジェルなど、洗い落としにくい製品の使用は控えめにすることをおすすめします。これらが髪に残ると、次第に髪が重くなったり、パサついたりする原因になることがあります。
スタイリング剤は「少量を何度かに分けて使う」のが基本です。一度にたくさん付けると、髪が重くなったり、ベタついたりする原因になります。まず少量を手のひらでよく伸ばし、毛先から中間部分に向けてなじませていきましょう。
また、寝る前に髪をとかしておくのも良い習慣です。一日の間に絡まった髪をほぐし、自然な油分を全体に行き渡らせることで、翌朝の髪のまとまりが良くなります。
まとめ:あなたに合った酸性ストレートを見つけよう
酸性ストレートは、髪に優しく自然な仕上がりが魅力の施術です。従来の縮毛矯正と比べてダメージが少なく、柔らかな質感を保ちながらくせ毛やうねりを改善できます。
この記事では、酸性ストレートの基本知識から、施術手順、適した髪質、ホームケア方法まで幅広くご紹介しました。髪質や状態によって最適な施術方法は異なりますので、必ず専門の美容師によるカウンセリングを受けることをおすすめします。
髪質改善を目指すなら、一度だけの施術ではなく、継続的なケアが重要です。適切な施術と日々のホームケアを組み合わせることで、理想の髪質に近づけていくことができます。
あなたの髪質や悩みに合った酸性ストレートで、扱いやすく美しい髪を手に入れましょう。髪の悩みや質問があれば、ぜひ髪質改善個室サロンでプロのアドバイスを受けてみてください。
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